時は24世紀―
艦長ナオミの操舵する時空船FIRE BIRDは歴史管理局の任を遂行している。
しかしそこにはインカ帝国の生き残りアマル(大輔さん)、ワスカル、ディエゴの3人、
2003年から連れ帰られた高校生アキラも乗船している。
彼等は過去では死んでおり現在には存在しない者達。つまり過去へ帰ることも
現在に足を踏み入れることも許されない、居場所を失った者達。
現在には存在しないアマルと、その彼を法を侵して救った男の娘ナオミとの恋も
絡めながら話は進む。
23世紀末、過去の遺物として発見されたノアの箱舟・・
それは過去へ遡ることのできるタイムマシーンと判る。
そしてそれをもとに時空船FIRE BIRDと百虎が建造された。
しかし箱舟は過去のものなどではなく未来から来たものだった。
それがもとでインカ帝国が歴史の幻となったと知ったアマル達は
'今の血塗られた歴史ではなく、平和な優しい歴史'を求めて、
自分達の歴史を取り戻すべく百虎で過去へと向かう。
FIRE BIRDは歴史を守る為彼等を追う。たとえどんなに醜いものであったとしても、
自分達が今存在する歴史を守る為に。。
個人の想い、立場としての想い、いろんな想いを抱えながら
ギリギリの状況で彼等は様々な決断を迫られる。
彼等は何に従い何を選び取って行くのか・・・。歴史の行方は・・・。

大輔さん演じたアマルは、友情に厚く、正義感が強く、祖国を愛する青年。
強い信念、葛藤、迷い、優しさ、、細やかに目の表情が変わっていくのが
見て取れ、心優しい純粋な青年を真っ直ぐに演じていて見応えがあった。

「おまえ達の歴史は守る価値のある歴史なのか?」アマルの絶叫が胸をつく。
地球上で絶えることのない戦火、癒えていかないその傷跡、破壊の続く環境。
それでも私達は今ここに生きている。どんな歴史の上に成り立っていたとしても、
私の大切な人達が存在するこの歴史は、私にとって守る価値があるのだと思う。
ナオミとアキラのやり取りにこんなのがあった。
「時空船は過去へしか行けないけれど、人間は未来へ行ける。なぜだか分かる?」
「・・・そうか、誰にでも明日は来るってことですね。」
希望に満ちた力ある言葉。現実はそんな簡単じゃなくて、その明日すら危うい人達が
地球上には大勢いるのだろう。でも、想いの強さというのは必ず未来を紡いでいくのでは
ないだろうか?少しづつでも、今はその変化が見えなくても、何世紀先、
アマルのようなせつない絶叫を聞かずにすむような現実があるかもしれない。

重いテーマが散らばってる、といろいろ考えたけれど
純粋に突き詰めていったら、本当に単純に、'思いやり'なのかなと思った。
他人に対するホンノ少しの思いやり、個人も組織も国も・・・
それが世界が破滅的に歪んでしまうのを押とどめる、そう信じたい。
地球が'平等に和する'日なんて来るのかと悲観しつつも、この時代が歴史の一つに
なった頃、この'今'という時間が、そこに存在するものが大切な世界であって欲しい。
少年アマル達が夢見たような優しい世界が未来にあって欲しい。